中国文学でもっとも有名な『不朽の名作』5選
『三国志演義(さんごくしえんぎ)』
日本でゲーム化もされているおなじみの『三国志』。
正式名は『三国志演義』です。これは明代に著された時代小説です。
後漢時代、※宦官(かんがん)や※外戚(がいせき)の陰謀が渦巻き、暗雲が立ち込めていた漢王朝。
そんな折、※張角(ちょうかく)を頭首とする※太平道(たいへいどう)の賊軍が漢王朝の転覆を狙います。
「蒼天已に死す、黄天まさに立つべし」というスローガンを叫び、
黄色の布を身に着けた賊軍が猛威を振るいます。
有名な※『黄巾の乱』(こうきん-の-らん)のことです。
そこで立ち上がったのが、漢の正当な血筋を受け継ぎながら筵(むしろ)を織って暮らしていた※劉備(りゅうび)でした。
劉備の仁徳の高さに魅せられた※関羽(かんう)・※張飛(ちょうひ)と桃園で義兄弟の杯を交わし、
黄巾の乱を鎮めるために旅立ちます。
また、一方で、劉備の最大のライバルとなる※曹操(そうそう)も兵を上げて戦地に向かいます。
劉備と曹操の二人を中心に、物語は広がりを見せていきます。
果たして天下は誰のものになるのでしょうか?
『三国志演義』の見どころは、なんといっても魅力的な人物の多さ。
次から次へと現われては消えていく儚くも美しい群像に魅了された人は数知れず。
あなたは誰に魅せられるでしょうか?
大まかな概要では満足できない!という方はぜひ読んで見るとハマる事間違いなしです。
以下単語および人物説明
※宦官(かんがん):去勢を施された官吏。宮廷内の女人と肉体的関係を持てないために去勢されます。宦官の位は従事する人の位で決まります。王様や皇太后直属ならば、宮廷内でも大きな力を持ちます。
※外戚(がいせき):母方の親戚。
※太平道(たいへいどう):後漢末の華北一帯で民衆に信仰された道教の一派。
※黄巾の乱(こうきん-の-らん):中国後漢末期の西暦184年(中平1年)に太平道の教祖、張角を指導者とする太平道の信者が各地で起こした農民反乱。
主要登場人物:
張角(ちょうかく):道教の一派である太平道の創始者。黄巾の乱を引き起こした人物。
劉備(りゅうび):後漢末期から三国時代の武将、黄巾の乱を鎮圧し、あの有名な「諸葛亮(しょかつりょう)」を軍師に持つ蜀漢(しょくかん)の初代皇帝でもあります。『三国志』の中心人物。
関羽(かんう):中国後漢末期の将軍。劉備に仕え、人並み外れた武勇や義理を重んじる彼は敵の曹操でさえ称賛していた。悲運な死を遂げたが後世に神格化され、47人目の神とされました。
張飛(ちょうひ):劉備の挙兵に当初から付き従った人物で、その人並み外れた勇猛さは中原(ちゅうげん)にまで轟いた。
※中原とは中華文化の発祥地、黄河中下流地域にある平原です。
曹操(そうそう):後漢末期の武将、政治家。詩人、兵法家としても業績を残した人物ですが、「三国志」の中では劉備の敵として登場します。
呂布(りょふ):赤兎馬(せきとば)という名馬を乗りこなす猛将として知られる人物。悪役ですが、その武勇は多くの人を魅了します。自らの「男の誇り」と愛する女に忠実であり、それらを守ることこそが何よりも最優先という生き方を貫く。「三国志」を語る上で欠かせない重要人物。
『水滸伝(すいこでん)』
北宋時代、国土には疫病が流行り、民は疲弊しきっていました。
打つ手を尽くした※仁宗(じんそう)は、
最後の手段として※竜虎山(りゅうこざん)に棲む仙人・※張天師(ちょう-てんし)に祈祷を依頼するため、
※洪信(こうしん)を派遣します。
洪信は多くの※霊威(れいい)に脅かされましたが、
※童子(どうじ)に化けた張天師を都に向かわせることに成功します。
翌日、張天師の※道観(どうかん)の中を見学していた洪信は
※「伏魔殿(ふくまでん)」いうと額が掛けられ、
厳重に封印されている扉を見つけます。
これに興味を持った洪信は、
周囲の制止を聞かずに権力を振りかざし、扉を開けてしまいます。
そして、その中にあった石碑をよけたところ、
幾筋(いくすじ)もの閃光が走り、天空へ飛び去って行きました。
実はそれらの光は、天界を追放された※百八星こと、108人の魔君(まくん)だったのです。
扉を開けたことで、百八星の封印を解いてしまったというわけです。
恐れた洪信は、その場にいた者たちにかたく口止めをし、都へ帰っていきました。
時は過ぎ、疫病は収まったものの、人々は悪政に苦しめられます。
なんの因果か洪信が封印を解いた、百八星は英雄たちへと変わっていきます。
※義憤(ぎふん)にかられた英雄たちが※梁山泊(りょうざんぱく)に続々と集結し、
彼らはやがて、悪徳官吏を倒し国を救うことを目指すようになります。
ここで、108人の魔君はなぜ英雄へと変わっていくのか?という謎が芽生えますよね?
魔君であれば、極悪なはず…
実はこの108人の魔君とは、元は天界の神仙(しんせん)たちだったのですが、
魔の心を捨て切れていないという理由により、天界から追放され「伏魔殿」に封印されていました。
しかし、人間界で良い事をすれば、また神仙に戻れる日がくる!
その思いから、民を助け人間界で英雄たちとなっていくのです。
『水滸伝 』は明代に描かれた伝記歴史小説の大傑作。
108人の魅力あふれる英雄たちの活躍は、見るものを魅了します。
物語をもっと知りたいと思う方は、ぜひ読んでみてくださいね!
以下単語および人物説明
※竜虎山(りゅうこざん):中国,江西省にある山。道教正一派の本山の所在地です。
※霊威(れいい):不思議な威力。
※童子(どうじ):こども
※道観(どうかん):出家した道士が生活する施設。道教寺院なども含まれます。
※伏魔殿(ふくまでん):魔を封印する場所、『水滸伝』では天界から追放された元神仙(魔君)たちを封印する場所とされています。
※108人の魔君(まくん):魔の心を捨て切れていないという理由により、天界から追放された神仙たち。
※義憤(ぎふん):外道に対する怒り
※梁山泊(りょうざんぱく):中国山東省に存在した沼沢(湿地)。『水滸伝』では英雄たちの拠点とされています。英語版の『水滸伝』では、「EDEN(エデン)」と訳されていたそうですよ。
主要登場人物:
仁宗(じんそう):北宋の第4代皇帝。
張天師(ちょう-てんし):中国,後漢末の五斗米(ごとべい)道の創始者、張陵(ちょうりょう)の子孫に対する尊称。ごとべい道も数多く存在した道教(宗教・教団)の一つ。
洪信(こうしん):伏魔殿にて108魔君の封印を解いた人。
百八星(ひゃくはっせい):梁山泊に身を隠した108人の魔君、物語の中では人間界の勇者となる者たちです。
『西遊記(さいゆうき)』
日本でもドラマ化や映画化されていたり、
絵本や漫画にもなったりと庶民に愛された、もっとも有名な物語ではないでしょうか?
私も個人的に一番好きです。
物語は唐代に、中国から遠路遥々インドへ渡り、
仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵(げんじょう-さんぞう)の旅をモデルに描かれています。
「三蔵法師(さんぞうほうし)」の名の方がなじみがあるでしょう。
日本では、ドラマで夏目雅子さんが演じられたことから、
三蔵法師は女性だと思っている人も多いですが、
「法師」つまりお坊さんですので、男性なんです。
ただ、彼は大変な美男子だったと描写されていたので、
勘違いするのも無理はないでしょう。
『西遊記』はその三蔵法師が、3人の弟子を連れ、
様々な苦難を乗り越えて天竺(てんじく)を目指すというお話。
※当時インドを中国では天竺と言っていました。
一番弟子の孫悟空(そん-ごくう)
何かと問題ばかり引き起こす問題児だが、実力は皆さんもご存知でしょう。
そして、悟空は三蔵法師を師として、とても慕っており、
いつも三蔵法師を命がけで守ります。
二番弟子の猪八戒(ちょはっかい)
元は天界の将軍だったが、美しい仙女に魅せられちょっかいを出した事により、
天界の王である天帝(てんてい)を怒らせ、人間界へと追い出される。
人間になるはずだったのにうっかり豚の体内に入ってしまうというおっちょこちょい。
三番弟子の沙悟浄(さごじょう)
天界から強風が砂を吹き飛ばす「流砂河(りゅうさが)」に追放され、
人を襲っていた妖怪だったが、三蔵法師の助けにより第三弟子となる。
白馬の玉龍(ぎょくりゅう)
三蔵法師が乗っている馬。元は西の海、竜王の第三皇子。
大事件を引き起こし、死刑と処されたのですが、
観音菩薩(かんのん-ぼさつ)の慈悲により、三蔵法師の馬となる。
この個性的な3人とともに、途中数々の苦難を師弟4人プラス白馬の玉龍で乗り越えて天竺を目指す。
果たしてその旅路はどのようなものなのでしょうか?
子どもから大人まで、幅広く楽しめる『西遊記』。
一度読んだという人も、もう一度読んでみるとまた違った印象を受けるかもしれませんよ。
1話完結型で、毎回新しい冒険が見られるので、楽しくサクサク読める事間違いなしです!
『金瓶梅(きんぺいばい)』
明代に著された長編小説。
『金瓶梅』という題名は物語の中心人物である3人の女性の名前から1字ずつ取ったものです。
その3人は、それぞれ
潘 金蓮(はん-きんれん)
李 瓶児(り-へいじ)
龐 春梅(ほう-しゅんばい)
この小説は当時には珍しい官能小説で、
実は何度も発売禁止処分を受けています。
では、なぜ何度も発行禁止にされるような
官能小説を四大奇書に数えるのかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
『金瓶梅』の魅力は、その描写方法にあります。
官能小説ですから、そういった場面が度々あるのですが、
写実的に描写するのではなく、詩や中国独自の文体の駢文(べんぶん)を用いるなど。
比喩的に表現しています。
また、当時の女性の愛欲、容姿や身に着けている物などを、
繊細に描写している事が特徴的です。
当時の女性の風貌や世の中を知るための資料としても価値の高い文学作品です。
『紅楼夢(こうろうむ)』
清代に描かれた長編の白話小説(はくわ-しょうせつ)です。
※白話小説:伝統的な漢文で記述された小説に対して、より話し言葉に近い口語(話し言葉)で書かれた文学作品のことです。
発売後は、『金瓶梅』を押しのけ、
中国四大名作のひとつとして数えられるようになりました。
貴公子の「賈宝玉(か-ほうぎょく)」とプライドの高い美少女「林黛玉(りん-たいぎょく)」の悲恋を描いた物語。
甘酸っぱく悲しい恋と悲劇的な婚姻を軸として、
4つの名家の栄枯盛衰(えいこ-せいすい)が描かれる『紅楼夢』。
※栄枯盛衰:栄えることと衰えること。その繰り返しを表す言葉。
その展開にドキドキハラハラ。
しかし、ドキドキするのはそれだけではありませんよ!
緻密に描かれる人の心とその闇。プラトニックな恋愛模様など。
ロミオとジュリエットの悲恋を彷彿させる中国の名作ラブストーリーです。
まとめ
いかがでしたか?
馴染み深いものから禁止されたものまで、中国文学は奥が深いですね。
今回紹介しきれない名作がまだたくさんありますが、
まずはこの5つを押さえておけば間違いないでしょう。
子どもの頃に読んだものも、
大人になって読んでみるともっと面白く感じられるかもしれません。
特に『三国志』や『西遊記』など
なじみあるのに、ちゃんと読んだ事なかった!という作品は、
一度しっかり読んでみると、新たな発見もあると思いますよ。
これを機に、ぜひ中国文学を手に取ってみてはいかがでしょうか?
今後とも知りチャイナでは、中国語学習や中国に関するお役立ち情報を配信して参ります。
参考になったらぜひシェアや「いいね!」お願いします。
引き続きお役立ち情報をお届けする励みになります。